『もっと知りたいイギリス』 〜 あとがきのあと

 

藤森　靖允（昭和40年卒）　

 

今年の6月、表題の本を出しました。存じ上げている三田キャンパスのOBの皆様にお送りしたところ、多くの方々から読後感や御批評とともに、御返事をいただきました。本を書いて一番嬉しいのは、このようにレスポンスいただくことなのです。この機会に厚く御礼を申し上げたく存じます。

会社を卒業して早4年。38年間勤めた会社は東レでした。東レは、今でも事業の半分を繊維が占めます。日本では繊維は斜陽産業ですが、地球規模では人口は増え続けますから、成長産業なのです。市場は海外に。でも輸出ではなく、海外に生産や販売の拠点をつくり対応します。これを海外事業といいます。こんな仕事に携わって、会社生活の大半を過ごしました。

この間、訪れた国は多いのですが、駐在したのはイギリスだけでした。30代の後半、家族とともに2年間過ごしたこの国が何とも懐かしい。「会社を辞めたら是非、再訪してみよう」 とかねてから思っていました。そして退職後、時間の余裕ができたので、この2年ほど、夏に少し長期にロンドンに滞在し、イギリスの名所を見て回わりました。

イギリスは歴史の深い国です。古さを大切にする国民性もあります。石の文化にも助けられて、多くの街に 「昔」 が残っています。まるで中世が、ほんの少し前のように感じられます。

田舎にいけば、なだらかな丘陵地帯が地平線まで続きます。牧草地には、方々で家畜が放牧されています。辺りは緑ばかり。夏の晴れた日などは、その緑はいっそう緑を増します。何とものどかな田園風景です。

イギリスが何でもいいわけではありません。イギリスにかぶれているわけでもありません。それでも、旅行者としてこのように 「歴史が生きる街」 を見て、「絵のように美しい （picturesque）」　田園を見れば、「イギリスは何とも豊かな国だ」 と羨ましく思わざるを得ないのです。

今年の夏も4週間ほどイギリスで過ごしました。できれば 「続」 でも書こうと思いまして……。このようにできるかどうかわかりませんが、もし実現できましたら、またお付き合いいただきたいと思っています。

（「もっと知りたいイギリス」はぎょうせいから発売されています。　1,800円）