寄稿文：
オバマ外政と内政の歴史的成果
9月11日、オバマ米大統領はこれまで2年以上に及ぶ国連常任理事国５カ国プラス独対イランの核開発中止の合意を確立しました。共和党やイスラエル右翼の懲りない面々がナンセンスな反対に血眼だったのですが、連邦上下院の民主党議員を固めての成果で、３ヶ月前に予想したとうりです。北朝鮮の核とミサイルの脅威に対してなんらの外交力を発揮できない安倍日本の無能さに寒気を覚えるかとおもいます。中国及び韓国との関係を改善しないのではどうしようもありません。
オバマ大統領の内政の歴史的成果の一つとして、リンカーン大統領による奴隷解放の憲法改正から150年にして、これが現実になりつつあることを指摘したく思います。米国内政の歴史的振り子がこれまで40年間の偏狭な保守から民主的進歩へと大きくブレもどっていると確信しています。一口に言えば、これまで40年間の非民主的な保守時代は、南北戦争で敗れた南部の北部に対する復讐時代だったといえます。オバマ大統領とクリントン大統領（1989年ー1997年）時代は北部の巻き返し時代といえます。2016年の大統領選挙で、民主党のヒラリークリントンが勝てば、オバマ大統領による民主主義の回復を基礎にして、レーガン、ブッシュ（父）、ブッシュ（長男）の共和党時代の南部保守のクリプトクラシー(衆愚政治)の清算がすすみます。
南北戦争（1861年－1865年）が終わり、1877年まではReconstruction時代として、北部の連邦政府主導の旧奴隷制度の清算が南部に課せられました。南部白人はKu Klux Klan（ＫＫＫ）という黒人へのテロ団体を作り、黒人のリンチ（集団暴行と殺人）を繰り返し、ついに1877年から1965年までの長い期間は、南部では黒人のあからさまな差別待遇が制度化されていました。この期間がJim Crow時代です。Jim Crow 制度とはアフリカ系米人差別のカースト制度といえます。Jim Crow制度廃止を求めたのが1950年代に南部から北部へ広がり高まったCivil Rights Movement (公民権獲得運動)です。ついに、1964年、ジョンソン大統領（民主）によるVoting Rights Actの成立となりました。しかし、1980年の選挙で、レーガン（共和）の勝利以来、Voting Rights Act の骨抜きがひどくなり、民主主義が衰えてきています。公民権の代表は投票の自由です。
（霍見氏はニューヨーク市立大学名誉教授）